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われわれが患者を最初にみた時,問診をすすめながら患者との対話によって,最も重要な症状を引き出し,疑診をおくべき疾患を頭の中で整理し,それを確定診断にみちびくべき諸検査を行ないながら,診断をつけるのが普通である.多くの場合,問診をすすめながら,ほぼ診断がつけられることが多い.したがって諸検査の成績は,診断の裏付けをするのに用いられることが多い.
呼吸器疾患の場合,最も多い症状は咳,疾,血痰,胸痛,息切れ,発熱などで,これらの症状は,単独で現われたり,あるいは2っ以上の組み合わせで現われる.しかも,ある種の呼吸器疾患にのみ特別に現われるという症状は少ない.ただその出現の仕方が,急に現われるか,徐々に現われるか,どのような組み合わせで現われるかによって,疑診をおくべき疾患が異なってくる.しかも患者の性別,年齢,職業歴,既往症やそれまでに患者のうけた治療法などを考慮することによって,疑診をおくべき疾患は,範囲がぐっと狭くなるのである.もちろん,患者の性別,年齢,自覚症状とその現われ方,職業歴,既往症を含めて,どのような場合にはいかなる呼吸器疾患を最も強く疑うべきか,そして稀な場合ではあるが,このような呼吸器疾患も念頭におくべきであるという呼吸器疾患の全貌を頭の中に日頃から整理しておくことが最も大切である.このような整理がついていなければ,患者との問診によっても疑診をおくべき病気を正しくピックアップできないので,問診を進めながら患者から必要な正しい情報を引き出すことができなくなる,問診というのは,患者と漠然と話しをすることではなく,患者との対話によって,必要な情報を患者から引き出して診断のための正しい路線へ一刻も早くのせることにあるのである.
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