カラーグラフ
下垂体および甲状腺機能不全
尾形 悦郎
1
,
戸川 潔
2
1東大・第1内科
2茨城県立中央病院・内科
pp.2228-2229
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204512
- 有料閲覧
- 文献概要
顔の視診は,内分泌疾患の疑い診断をつけるきっかけとして,非常に大きな比重を占めている.
顔の視診の場合,ここで示す写真にみられるような静的な印象とともに,実際には,動的な表情の変化や,俗にいう顔の色つや,あるいは温かいまたは冷たい顔つき,さらに眼つき,など,微妙な点が検者に強い印象を与え,実は,これがまた,診断の重要な手がかりとなる.たとえば,典型的な場合,甲状腺機能亢進症患者の顔つきは,不安・緊張あるいは驚愕とも表現したいような具合で,眼は大きく見開かれていてするどく,しかも潤み,輝いてみえる.眼瞼や口唇は細かくふるえ,表情は活溌に変化する.全体として,そわそわと落着きのない印象で,診察にあたる私たちまでいらいらしてくる感じである.これと似た状態を示すものに,褐色細胞腫の患者がある.とくに発作時,あるいはその前後で,その傾向が比較的はっきりしてくる.Cushing症候群の患者も,ときに不安・緊張の顔つきを呈するが,この場合には,多くは抑鬱の傾向にあり,いらいらと沈んでいる,という感じの顔つきとなる.この点では,神経性食思不振症患者の顔つきも同様である.なお,さらに細かく観察すると,神経性食思不振症患者の顔には,意外とうぶ毛が多く,これらは,毛髪やうぶ毛に脱落の傾向があり,全体としてにぶい感じの顔つきをもつ下垂体前葉不全患者とは,大分ことなる.甲状腺機能低下をもつ患者では,顔は色つやに乏しく,また表情に乏しい.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.