特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
XVII.一般症状
1.発熱よりなにを考えるか
微熱
冨家 崇雄
1
1賛育会病院・内科
pp.1518-1520
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204370
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微熱の特異性
「微熱」はいわゆる原因不明の発熱という状態の領域に属する,まことにやっかいな問題の1つである.
「微熱」の特異性は次のように要約できるであろう.1)体温値としては38℃くらいまでを微熱として取り扱う立場もあるが,微熱問題の核心となる体温の範囲は,実際的には腋窩温で36.9-37.0℃から37.5-37.6℃くらいの間のものである.すなわち統計的な正常体温分布の範囲を含んでいる点が極めて特徴的である.2)さらにその原因が不明であるままに相当長期間微熱が継続するという特徴をもっている.3)患者が微熱に気づきこれを問題とするに至るのは,初めに何らかの病感があって体温を測定し,ついでその微熱範囲の体温が継続することに気づき不安におそわれる点に始まる.したがって原病を指示すべき決定的な訴えや症状は明らかではないが,患者は一種独特な不安感を示し,不定愁訴をもっている場合が多い.その主なものは全身あるいは四肢の倦怠感,易疲労性,頭重感や頭痛,なんとなく胸苦しい感じ,腹部不快感や食欲不振,肩こり,顔面や躯幹上半部のほてり感,四肢のほてり感や冷感などである.4)また原因が一応推定されたとしても,いわゆる科学的に万人を納得させるほどの確実性にいたらぬ場合が多い,5)一方原因が明らかにされた場合,最初は一番の関心事であった体温上昇はむしろ軽視されるにいたる傾向がある.
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