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血液成分の利用
大林 静男
1
1日本赤十字社血液事業部
pp.1572-1573
発行日 1971年10月10日
Published Date 1971/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203857
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血液成分の利用に乏しいわが国の現状
新しい輸血として,各患者の適応にしたがって,血液を血液成分に分けて用いる方法が開発されてからすでに久しい.しかるにわが国における現状は,一般に輸血にはほとんど全血のみが用いられており,今年の日本医学会総会シンポジウムでも,「血液成分利用の展望」が取り上げられたように,この利用は一部に限られていることは,まことに悲しむべき現実である.1日も早く全国でこれが活用されるために,問題点が明らかにされ,輸血を取り巻く体制の整備を目ざして,可能なところから前進は始められるべきではないかと考える.
筆者は戦前慶応の内科に,三辺・長谷川両君などと一緒に入局したが,のちに細菌学教室に転じ国立東京第二病院,千葉県血清研究所,北海道立および赤十字血液センター,日本バプテスト病院(京都),赤十字中央血液センター(東京)を経て,現在赤十字センターの技術指導に責任をもつ立場で,その個人的経験から痛切に感じていることは,日本の特有の状況のためとはいえ,日本の輸血が今日国際的水準からはるかに遠いのは,輸血に対して,日本の内科医ことに血液専門医が医学的責任や指導をもつ体制になかったことが最大の原因ではないかということである.
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