臨時増刊特集 身体所見のとり方と診断のすすめ方
●身体所見のとらえ方
VII.腹部
2.外科の立場から
長洲 光太郎
1
1関東逓信病院外科
pp.814-817
発行日 1971年5月20日
Published Date 1971/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203668
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症状のとらえ方
すでに第1章以下に"At a glance"の意義について諸家の記述がある.筆者も他誌にこのような標題で記述をこころみたことがある.physical ex-aminationを書くのが本項の目的であるが,それには相反する2つの要請がはたらいている.第1はat a glanceによる方向づけからみちびかれる検査診察ということであり,第2は先入主にまよわされずに,広く全身的に診察せよということである.この両者は一読してわかるとおり相反する方向を示す.それにもかかわらずわれわれは,自分というひとりの人間の中で1つの態度をとらざるをえない.かりに第1と第2とを折衷しても,それはひとりの医師として"ある態度"をとるという点では同じことである.
元来病人は病気,病状をもって医者の前に投げだされている.いいかえると医師の判断はそのような外にあるものをpassiveに受けとめる鏡のようなものだという考えが"客観的医学"であるかのごとく誤解されている.そこでは医師は鏡にうつったpassiveな印象からさきにすすむ段階で,検査や判定の選択を行なうというのである.それが望ましいというのである.こういう考えは正しくない.
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