読後随想
医学小説は存在するか—有吉佐和子著:華岡青洲の妻
長洲 光太郎
1
1関東逓信病院外科
pp.513
発行日 1971年4月10日
Published Date 1971/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203589
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昨年東京の芸術座で本書が舞台に上がっていた.シュワイツァの小説は書きにくいだろう.ポールムニの演じたパスツールの映画は戦前の名作だったが,ペーターローレの演じたレンブラン伝より劣った.
崇高なるヒューマニズムに貫かれた医者を主人公にした小説はどうもつくりにくいらしい.良く書こうとすれば甘味が勝って,作者ひとりよがりになる.本格小説ではきれいごとばかり書いてもしかたがない.小説構成がむずかしい.それをちゃんとやらぬと,飛行機乗りの空戦自慢話や特攻隊涙の壮挙などのように,小説とはなりえないのである.
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