病理夜話
子宮(その1)
金子 仁
1,2
1国立東京第一病院病理
2日医大老研
pp.127
発行日 1971年1月10日
Published Date 1971/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203486
- 有料閲覧
- 文献概要
病理学教室へ入って20年以上もたったが,その間いろいろの思い出はつきない.ことに生検(プローベ)や細胞診は決定診断であるため,臨床医に迷惑をかけたことも一通りでない.生検,細胞診のうちでも子宮癌の診断を依頼されることが一番多い.細胞診にしろ,生検にしろ,病理診断は病理医の絶えざる努力と病理衛生検査技師の優秀な標本と相まって初めて適切に,正しく,つけられるのである.
それはもう20年も前の話になる.当時私は病理助手を拝命して2,3年経ったばかりの生意気盛りであった.婦人科から70歳くらいのおばあさんの子宮腟部組織を持って来て,病理検査の依頼があった.結果を急ぐというので,凍結切片を作ることになった.これはゲフリールといっている病理標本作製法で,組織を炭酸ガスで凍らせ,メスで薄く切り,染色標本を作る方法である.通常用いるのはパラフィン切片であり,これは4,5日かかるがゲフリールは5分間くらいで標本ができあがるのである.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.