日本人の病気
脳卒中
広田 安夫
1
1九大第2内科
pp.1776-1777
発行日 1970年12月10日
Published Date 1970/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203428
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変わった脳出血対脳硬塞の比率
日本人の脳卒中—この話題の1焦点は,脳出血と脳血栓症の頻度であろう.従来,世界の国々の中でも多発で知られたわが国の脳卒中の特色は,脳出血の圧倒的高頻度であるといわれた.事実,昭和26年の死亡統計では脳出血対脳硬塞(血栓+塞栓)の比率は実に29対1であった.しかしこの比率はその後,急速に減じ,昭和30年頃には12対1,昭和40年頃には3.8対1と著しい変化を示している.これが主として死亡診断書の死因としての脳硬塞の著増によることを既に指摘しておいたが(図1),この傾向は社会的経済的にみて最も活動的な中年期(30-59歳)の死亡率でも同様である.むしろ脳出血の好発年齢である中年期の男女で明らかに脳出血の減少と脳硬塞の増加が認められた.次に,剖検輯報に報告された全国各地の中年期男女の剖検例でも,昭和33年以来主病変としての脳硬塞の頻度は男子でしだいに増加している(図2).
中年期の,ことに男子の死亡統計,剖検記録にみられる脳硬塞あるいは脳血栓の最近の増加傾向がなにを意味するか,診断手技の進歩,脳卒中一脳出血という既念の変化,生活様式・環境の変化,食餌内容の変化,降圧剤の普及等々多数の因子の影響を考えなければならない問題であるが,詳細は今後の検討に待たねばならない.
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