診断のポイント
亜急性甲状腺炎
鈴木 秀郎
1
1東大第1内科
pp.1070-1072
発行日 1970年6月10日
Published Date 1970/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203235
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亜急性甲状腺炎は1904年スイスの外科医により始めて報告された疾患であるが,その後ながい間,この疾患の患者は臨床的にも病理組織学的にも,いろいろな他の疾患と誤られてきた。1948年Crileはこの疾患が亜急性に経過し,予後可良であることを強調する論文を書き,ようやくその正確な病像が広く世に知られるようになった.日本でこの疾患に始めて興味をもち,その正しい概念を世に普及するのに最も大きな貢献をしたのは東大第2外科の藤本で,1955年頃(昭 30)からのことである1-3).
以上のように,この疾患は比較的古くから発見されているにもかかわらず,臨床レベルで正確に把握されるようになるまでに長い期間を要しているが,これはこの疾患が比較的まれで,他の疾患とまぎらわしいような臨床経過と病理組織像を有し,しかも予後可良で後遺症を残すことなく治癒してしまうためと考えられる.しかし,始めからこの疾患の存在を知って患者をみるならば,その病像はまことに特有で,実際に症例を経験したら忘れようとしても忘れられないものである.
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