臨時増刊特集 日常役立つ診療技術
治療篇
XI.減感作療法
野口 英世
1
1昭大内科
pp.975-976
発行日 1970年5月20日
Published Date 1970/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203210
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本邦で種々のアレルギー性疾患に対し,本格的に脱感作(減感作)療法が行なわれるようになったのは比較的最近のことである.これは欧米諸国のようにアレルゲンが明確である枯草熱のような疾患がなかったことも原因するが,また一面アレルゲン検索の努力が不十分であったことも否めない小事実である.近時本邦でもこの方面の研究がさかんになり,花粉症も稀でないことが判明したし,職業的アレルギー性疾患を含む公害問題の研究もさかんになってきた.またアレルゲンエキスの作製は非常に煩雑であり,ために専門家の間で試みられたにすぎなかったが,近時本邦でも優秀な診断用ないし治療用のアレルゲンエキスが市販されるにおよんで脱感作療法に対する関心が昂まってきた.脱感作療法の歴史は古く,アレルギーの概念が展開される以前より枯草熱について行なわれ発展したが,枯草熱などにおける脱感作療法は,実験的アナフィラキシーにおける脱感作現象と異なり,その症状発現に関与する抗体自体の性質が違うことも関係し,完全な脱感作状態はとうてい望めないし,治療効果を得るためにはアレルゲンの反復注射が必要であり,その奏効機序も実験的アナフィラキシーの脱感作とは異なるといった点から,最近では脱感作という言葉はあまり適当でないと考えられ,減感作(Hyposensitization)という言葉が用いられている.
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