治療のポイント
胃切除後の貧血と低栄養
奥田 邦雄
1
1久大第2内科
pp.316-318
発行日 1970年3月10日
Published Date 1970/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203013
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
胃切除後の消化管機能と吸収
胃切除後の生理学的な変化は体重,血液に徐々にしかし端的にあらわれる.その程度は患者の術前の状態,胃切除の原因(潰瘍か悪性腫瘍か),手術侵襲の大きさ,ことに切除範囲と胃吻合方法に大きく左右される.切除前にすでに低栄養,低蛋白,貧血を有していたような患者では術後の影響が大きく,通常,体重減少,回復の遅延,貧血増悪が著しい.それに反し術前健康体であったものは手術の影響は概して少ない.胃の切除範囲が大きいほど後の障害が大きいように思われるが,その関係は必ずしも平行的でなく,全摘,亜全摘では手術後吸収不全症候が強くでてくる.また部分切除でもBillrothⅠ法とⅡ法とで術後のdumpingの頻度,低栄養状態の出現頻度に差があることは周知のところで,最近外科医もなるべくⅠ法をとるように努力しているようである.
胃部分切除後,術前の体重に復しきれない,いわば低栄養状態を呈する患者の頻度の統計はまちまちで,80%という統計から10%前後という報告まであるが,いずれにしてもかなりの数の患者は術後体重が減って元の体重まで復しえない.その理由は摂取カロリー絶対量の減少と,消化吸収能の低下の両方である.すなわち胃容積の減少による1回摂取食物量の低下は,食事回数の増加だけでは十分代償しえない.
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.