新春特集 I Leading Article '70
4 検査項目選択の論理と現状
深い思考実験から検査情報の処理へ—臨床側として
阿部 裕
1
1阪大第1内科
pp.18-20
発行日 1970年1月10日
Published Date 1970/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202924
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診断の水平思考
最近,ものの価値を再発見し進路を確証するために水平思考の効用が説かれているが,それにならって診断の目的を情報科学時代の眼で点検してみよう.診断の定義ははなはだあいまいで,わが国の診断学の書物はいずれも「病名を知ること」,「疾病の治療に不可欠」などと簡単にわりきってしまっている.この点,Klempelerの診断学には,16行にわたって診断の目的が述べられているのはさすがであるが,これも定義というには少々内容不足である.
"diagnostics"は医学のみの用語ではない.論理学では鑑別学と訳され,その作業は未知の個体についてその特性を調査し,既知の標本と照らして同定し位置づけること,と解釈されている。臨床医学における"diagnostics"もまさにそのとおりであるが,目的をもう少していねいに説明しておかないと誤解を生じるおそれがある.つまり同定,位置づけといっても病名を決定することと同意義ではなく,もっと必要な医師のとるべき行動の決定を目標とするのが診断学でなければならない.むしろ病名の決定も医師の行動決定の補助過程といってもよいのである.
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