文献抄録
肝硬変に対する門脈減圧手術の反省
佐々木 智也
1
1東大物療内科
pp.1028
発行日 1969年9月10日
Published Date 1969/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202802
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肝硬変には門脈高血圧がつきもので,その結果として発生してくる食道静脈瘤がしばしば死の原因となる.出血の際の死亡率はほぼ3%で,きわめて危険な合併症といえる1.そこで手術的に門脈と大静脈との吻合prophylactic portacavalshuntをつくって,この危険から逃がれることも行なわれてきた.Boston Inter-Hospital Liver Groupは,約10年間にわたって肝硬変患者で門脈-大静脈吻合を行なった例と,内科的治療に終始した群との比較を行ない,その最終的な結果を報告している2).その分析結果は肝硬変治療の新しい道標を作ったものともいえ3),考えるべき多くの問題を提起している.
詳しくは原報告によるべきであるが,注目すべきは第1に手術によって再出血の危険が減少するとともに食道静脈瘤が消失または縮少することが多いのは当然として,第2に生存率,第3に合併症である.生存率については,手術群と対照群とでは有意な差がなく,合併症では,明らかに手術群に肝性の脳症hepatic encephalopathyが増加し,重症のそれは対照群の5倍も発生している.このように,思ったより悪い成績が得られた理由の分析も行なわれてはいるが,大出血の際の救命的な咽手術以外,はたして門脈一大静脈吻合を積極的に行なうべきか否か,考えなおす必要があるように思う.
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