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特集 進行性消化器癌の外科
直腸癌,ことに進行性直腸癌の外科
Surgery of cancer of the rectum with special reference to advanced cases
卜部 美代志
1
Miyoshi URABE
1
1金沢大学医学部第一外科学教室
pp.491-500
発行日 1967年4月20日
Published Date 1967/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204278
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はじめに
現在,外科においては,どの部位の癌に限らず,その初期癌の段階で治療されることは極めて稀であつて,多くは進行癌の状態で治療に持ち来らされているのである.直腸癌についてもその例外ではない.然らば,進行癌とは何をいうかの定義もまた必ずしも容易に下せるものではない.McDonaldのbiological predetermination)の説によると進行して予後の悪くなる症例と,そうでないものとは,すでに,癌発生の当初からきまつているものという.それはともかくとして,直腸癌の場合,癌が粘膜層に限局して,まだ血管,リンパ管に侵入していない状態,すなわち,早期癌の段階を過ぎると,その癌細胞ないし癌組織の伸展度を厳密に規定することは,もはや困難となる.したがつて,私共が直腸癌症例の治療に臨む場合,まず,手術にあたつては,癌の浸潤,転移および播種の及んでいるリンパ系ならびに周囲臓器のen bloc resectionを徹底せしめる根治手術の原則が最も重要視されるのである.その意味において,早期癌を除く大多数の直腸癌症例に対して行われる根治手術は,必要に応じて周囲臓器の合併切除が行われる場合にも,また,然らざる場合にも,その間に本質的の差異はないのである.
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