今月の表紙
バンチ症候群の病理組織所見
福田 芳郎
1
1順大第1病理
pp.494
発行日 1969年5月10日
Published Date 1969/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202643
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表紙の図は,いわゆるバンチ症候群の臨床診断がつけられ,剖検あるいは手術的に切除された肝,脾の組織像である.肝の病変としては肝線維症,肝硬変症,日本住血吸虫症などがみられるが,本邦では全体の約2/3が肝線椎症を示している.すなわちグリソン鞘を中心とする密な線維化であって,同時にグ鞘内の門脈枝に"つぶれ",つまり狭窄,消失がみられる.また肝小葉に歪みがあり,グ鞘と中心静脈の近接化などがみられ,肝内門脈系を主とする血液循環系に異常のあることが示唆され,臨床的に門脈圧の亢進がしばしばみられる.
脾は巨脾,すなわち正常の10倍以上,1000g以上にもなりうるが,その構成全組織要素の増大により脾腫を形成するが,約80%の容積を占める赤脾髄の増大がいちじるしく,髄索からの細網組織の増加,洞様構造の新生(静脈洞増殖)ということにより大きくなるものと思われる.Bantiのあげた赤脾髄のFibroadenieはこのような変化を示しており,その他に病理組織学的にあげられている脾の特徴として動脈周囲性線維化,脾材内出血,Gamna-Gandy小結節,脾材の開疎(Aufsplitterung)などがある.
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