EDITORIAL
肝癌
高橋 忠雄
1
1慈恵医大内科
pp.265
発行日 1969年3月10日
Published Date 1969/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202575
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肝癌は一般肝疾患のうちでも,また消化器系癌のうちでも,過去においてはその絶望的な予後のために,その診断および治療が,学会等において活発な討議の対象となることは少なかった.6年前(1963)の大阪での第16回日本医学会総会において,私が司会を依頼されたシンポジウムは"肝硬変と肝癌"であったが,これは主題の示すごとく,肝硬変より肝癌への移行の機序,あるいは両者の病態生理の異同などが主として論ぜられ,またこのときの演者も4人の内科臨床家と2人の病理学者(うち1名はタイ国より参加)で,若干の追加も主として内科学の立場からであった.しかし,その3年後東京で行なわれた国際肝臓研究会の総会では,欧米の外科医の方からの示唆もあり,私ははじめはこのへんの時点で,そろそろsurgical hepatologyのシンポジウムをと思ったのであるが,十分な数の演者が得られないままに,主題をそのひとつの前段階の研究にしぼって,"Vascular Supply of the Liver"にかえた.
ところが,そのころから,肝癌の診断と治療をめぐる研究の報告がにわかに増してきたようである.最近に行なわれた肝臓関係の国際的なシンポジウムでは,必ずといってよいくらい,肝癌がひとつの中心テーマとなっている.
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