100万人の病気
心臓神経症—精神科の立場から
中沢 恒幸
1
1慶大・精神神経科
pp.497-501
発行日 1967年4月10日
Published Date 1967/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201726
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心臓神経症は神経症の一状態
精神科で実際に心臓神経症という診断を用いることはまれとはいわないまでもかなり少ない。それは心臓神経症が神経症の一状態にすぎず,訴えが心臓に関係するというだけだからである。換言すれば心臓神経症と診断する前に不安神経症とか,心気症とか,ヒステリーとか上部概念に相当する診断があつて,その下に心臓神経症状態と副診断をつけるべきだともいいうるのである。
しかしそうはいうものの心臓神経症という診断はわれわれの畠でも実際に用いられ,かつそのように診断することが便利である。なぜなら神経症ノイローゼには必ず自律神経症状を伴い,その心理的背景に時間をかけて分析するよりも自律神経症状を主として診断するほうが容易だからである。たとえば一応器質的所見が否定されたとき頭痛,めまい,四肢のしびれ,冷えがあれば血管運動神経症,食欲不振,吐気,胃痛,下痢または便秘なら胃腸神経症,性欲減退,性交恐怖なら性的神経症のように動悸,発作性頻脈,心窩部痛に心臓神経症と診断して誰がまちがいだといえようか。
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