ニュース 厚生省記者席より
泥にまみれた医の倫理
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pp.449
発行日 1964年6月10日
Published Date 1964/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200340
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数年前から,日本医師会は医の倫理の高揚ということを,しきりに強調している。医が算術であるようなお医者さんは,患者にとつてたいへん迷惑であるばかりでなく,まかりまちがえば命とりになるおそれさえある。だから医師会が医倫理を口にすることは,それ自体あまりにも当然のことだし,お医者さんも大いに考えてほしい点だ。一患者として私どもも,首をかしげるようなお医者さんに時としてぶつかることがあるのだから―。請求書づくりに忙殺されるという,いまの保険制度にのみ責任を押しつけるような弁明は,診察をうける側の,つまり自分の健康を医師に託した患者にとつては,まつたく説得力がない。
ところで4月1日に行なわれた日本医師会の会長選挙は,そういう医の倫理をどこかに置き忘れてきたのではないか,と疑いを抱かせるような有様だつた。これがトップ・クラスのお医者さんらの集まりなのか,つき合い,つかみ合い,ののしり,総会荒しのゴロツキみたいな言動があつた。信頼も品位もあつたものではない。良識ある紳士と自負する医師会の選挙がこんな泥試合であつてよいものだろうか。紳士ぶつた顔と,闘争をむき出しにした顔と,医師とは2つの顔をもつた人種なのだろうか。少なくとも会長選挙に集まつた人たちはそうだつたと思う。
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