文学の中の看護
その人のための幸せ—佐多稲子著“泥人形”
清水 昭美
1
1大阪大学医療技術短期大学部
pp.764-770
発行日 1975年12月25日
Published Date 1975/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906946
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あらすじ
島田に結い,兄嫁や母親の手で化粧をしてもらって,赤い模様の帯を締め,新夫が迎えに来るまで座敷で正座させられている敏子.それは田舎の素朴な土人形—白い土で丸い形を抜き,赤い絵具で模様をつけただけの泥人形のようだった…….
精薄者の敏子を主人公とし,結婚,その失敗から,家族の運命に組みこまれて一生を終えるまでを淡々と描いた,佐多稲子著‘泥人形’(“群像”1960年11月)は,精薄者の生涯を追ったという点で,日本では極めて珍しい,意欲的な短編といえよう.日本の平均的と思われる一家の中の,精薄者のどこにでもありそうな待遇を描いている.
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