メディチーナジャーナル 循環器
腎盂腎炎の診断
三村 信英
1
1虎ノ門病院循環器科
pp.306
発行日 1964年5月10日
Published Date 1964/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200299
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いわゆる慢性腎炎という臨床診断が臨床医の間で安易につけられている傾向が多いように思われる。慢性腎炎そのものの慨念があまりにも広く,尿中に蛋白および赤血球が一定期間にわたって証明されると,すべて慢性腎炎として取り扱われて不治の疾患とされて,あまり診断的な検索がされずに治療から見放され医師も患者もあきらめているようである。
しかし,このいわゆる慢性腎炎として扱われている患者のうちで,腎実質内の細菌感染によっておこる慢性腎盂腎炎がかなりの頻度に含まれていることを忘れてはならない。しかも,欧米においては慢性腎炎よりも腎盂腎炎の頻度が多いといわれ,剖検例の検索でも死因が腎盂腎炎によると考えられるものが,全体の約10%も占めていることは注目すべきである。わが国でも慢性腎炎による腎不全と考えられた症例が,剖検で慢性腎盂腎炎であったとの報告がしばしば見られている。細菌感染による腎盂腎炎は化学療法の発達してきた現在では治療が可能であり,いわゆる慢性腎炎とされている患者中より鑑別して早期に治療をすることが望ましいわけである。
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