簡易臨床検査のやり方と評価
肺活量について
梅田 博道
1
1東京医科歯科大・第2内科
pp.8
発行日 1964年4月10日
Published Date 1964/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200210
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できるだけ吸いこんだ位置(最大吸気位)からできるだけはき出した位置(最大呼気位)まで,がんばつてふかせた量を肺活量ということは皆さんご周知のこと。しかし,肺活量にはいろいろ種類があり,それぞれが示す意義がちがうのです。ここに臨床的に重要なSlow vital capacityとFast vital capacityについて述べましよう。
できるだけ吸いこんだ位置からゆつくりとできるだけがんばつてはき出した肺活量をslow vital capacity(呼気肺活量)といい,これを一般には肺活量としています。これに反して,できるだけ吸いこんだ位置から一気に早くはき出した肺活量をFast vital capacity(努力性肺活量),またはFast Expiratory Volume(FEV)といいます。この検査をTiffeneau testともいいます。前者は肺,胸廓系のふいご作用,すなわち肺,胸廓系の伸展性を示すもので,胸膜べんち,肺の線維化などで減少します。これを拘束性換気障害と名づけます。後者は肺,胸廓系の呼出力と気道の抵抗,すなわち,気道の気流に対する抵抗,気流自体の抵抗,呼出にともなつて生ずる肺,胸廓の変形に対する抵抗などの綜合結果を示し,ぜんそく,肺気腫,気管支炎などのときに減少します。これを門塞性換気障害と名づけます。
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