書評
—今井博久,福島紀子 編—これだけは気をつけたい高齢者への薬剤処方
武藤 正樹
1
1国際医療福祉大大学院・医療経営管理学
pp.2208
発行日 2014年11月10日
Published Date 2014/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200145
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高齢者の薬剤処方で,「ひやり,はっと」した経験をお持ちの方は多いだろう.もともと外科医で,今も週2回の外来診療を行っている評者にもこうした経験は少なからずある.若いころ高齢者の外鼠径ヘルニアの術前の投薬で,ジアゼパムと塩酸ヒドロキシジンを使ったら,術後,延々と24時間以上も患者さんが眠ってしまって,目覚めるまでドキドキしたことがあった.
またニューヨークのブルックリンで家庭医の留学をしていたころのことだが,老年医学の専門医がいつも口癖のように言っていたことを思い出す.「高齢者をみたらまず薬を疑え!」.高齢者は多剤投与になりがちだし,医薬品による有害事象も出やすい.米国ではこうした高齢者の薬剤処方に関して,老年医学の専門家のMark H. Beers氏が1991年に初版を発表した「ビアーズ基準(Beers Criteria)」が用いられている.ビアーズ基準では,有害事象の重篤度の点から高齢者に使用を避けるべき薬剤の一覧表を示していて,2012年版には約90種類の医薬品のリストが挙げられている.
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