書評
肝の最新MRI
栗林 幸夫
1
1慶應義塾大学医学部放射線診断科
pp.1694
発行日 2004年10月10日
Published Date 2004/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107501
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このたび,谷本伸弘先生の編著による「肝の最新MRI」が上梓された.肝のMRI,特に肝特異性MRI造影剤の臨床と研究に心血を注ぎ,優れた成果を挙げてきた谷本先生の姿を知る私としては,大きな喜びである.
谷本先生は,従来から腹部実質臓器の画像診断を専門領域として活躍してきたが,肝特異性MRI造影剤の研究に進むようになったのは,1990年にHarvard大学Massachusetts General Hospitalに留学し,彼の恩師となるDavid Stark博士の薫陶を受けたのが契機となっている.留学から戻ってからも,網内系細胞に貪食される超常磁性酸化鉄製剤(SPIO)に関する一連の基礎的,臨床的研究を続け,生体顕微鏡を用いてSPIOの空間的分布がMRIの信号強度,特にT2*緩和時間に影響を与えることを明らかにし,またKupffer細胞の組織内密度ばかりでなく,その機能がMRI上の信号強度に変化を及ぼすことを証明した.これら一連の研究は,種々の病態における網内系細胞の動態を明らかにするとともに,肝腫瘍性病変の画像診断と鑑別診断に大きく貢献したことから,国内外から高く評価された.慶應義塾大学においても,優れた研究業績に対して与えられる医学部三四会北島賞を2002年に受賞している.
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