書評
―吉野相英 監訳 立澤賢孝,戸田裕之,角田智哉 訳―臨床てんかんnext step―知的障害・自閉症・認知症から併発精神障害まで(『The Neuropsychiatry of Epilepsy, 2nd ed』Michael R. Trimble, Bettina Schmitz 編著)
平田 幸一
1
1獨協医科大学神経内科
pp.547
発行日 2014年3月10日
Published Date 2014/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107394
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神経内科医,あるいは神経学者の精神医学的関心の高まりはてんかんにかぎったことではない.多くの神経疾患で同じように精神医学の役割が増している.学習障害における神経遺伝学的発見や自閉症における中枢神経系異常の発見によって,神経学と精神医学の境界領域はさらに拡大し,同じものを両者がみていることに当然のことながら気づき始めた.本書にあるように同じことが学習障害や自閉症を併発したてんかんにもいえる.
てんかんに精神病が生じることは以前から知られてはいたが,その生物学的基盤が受け入れられるようになったのは内側側頭葉てんかんと扁桃体や海馬などの辺縁系の関連や統合失調症のつながりが明らかとなり,重要な病態と考えられるようになったことが背景として考えられる.こうした進歩によって,てんかん併発精神障害の神経解剖学的あるいは神経化学的基盤の理解が促され,わが国では歴史的にもともと精神科医がみていたてんかん患者を欧米でも神経内科医よりも精神科医になじみのある向精神薬で治療を受ける人も増えてきている.
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