特集 新時代の肺炎診療
扉
石田 直
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1公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院呼吸器内科
pp.1921
発行日 2013年11月10日
Published Date 2013/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107163
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2011年,肺炎は脳血管障害を抜いて,わが国の死亡原因の第3位に浮上した.その死亡者のほとんどは60歳以上の高齢者であり,年齢が上がるにつれ,肺炎の罹患率,死亡率は加速度的に増加している.高齢者が誤嚥性肺炎を反復して発症し,その診療に苦慮することは,臨床医ならば誰しもが経験していることと推定される.1898年にSir William Oslerが述べた,「肺炎は老人の友である」という言葉は,100年以上経過した今日においてもまさしく至言である.このような超高齢社会と高齢者肺炎の増加を背景として,2011年には日本呼吸器学会から,医療・介護関連肺炎(NHCAP)という新しい肺炎のカテゴリーの概念も発表された.
一方,抗菌薬治療の進歩にもかかわらず,若年者層においてもしばしば重症や劇症型の肺炎が認められ,治療の甲斐なく不幸な転帰をとる例も経験される.各種の細菌学的・遺伝子学的検査法の発達はみられているが,肺炎の原因微生物の判明率はいまだ満足できるものではなく,多くの場合はエンピリックセラピーが行われている.院内肺炎においては各種の薬剤耐性菌が問題となり,新規抗菌薬の開発も以前ほど盛んではない.肺炎は,いまなお臨床医にとって最も重要で困難な疾患の1つである.
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