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内科診療に役立つ国内外のガイドライン
慢性膵炎の診療に関する国内外のガイドラインとして,1998年世界で最初に米国消化器病学会から慢性膵炎疼痛の治療ガイドライン『American Gastroenterological Association Medical Position Statement:treatment of pain in chronic pancreatitis』1)がフローチャート形式で発表された.日本では日本消化器病学会により胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,炎症性腸疾患,肝硬変症,胆石症,慢性膵炎の消化器6疾患について,2006年からガイドライン委員会を発足し,エビデンスに基づいた診療指針を作成して消化器医はもとより一般医師向けに広く提供すべく,2009年に南江堂から発刊された.この日本消化器病学会編『慢性膵炎診療ガイドライン』2)は米国のガイドラインが疼痛対策に限定されていたのに対して,慢性膵炎全般を網羅した体系的診療ガイドラインとなっている.すなわち,国内外のエビデンスを体系的に検索,吟味,評価した上で,61項目からなるクリニカル・クエスチョン(CQ)の形式で,診断,重症度・病期,合併症対策を含めた治療(食事および生活指導,薬物,膵内外分泌不全対策,内視鏡治療,外科手術など)および予後と経過観察法にわたるガイドラインである.エビデンスとしての文献検索数は“PubMed”および“医中誌”からそれぞれ英文4,773編,邦文2,548編である.個々のCQについてステートメント,推奨グレード,国内外別にエビデンスレベルの明記とともに保険適応についても併記されている.さらに,日本消化器病学会では患者さんや社会が一体となって病気と向かい合う重要性から,『患者さんと家族のための慢性膵炎ガイドブック』3)を2010年発刊し,だれでもが書店で入手できるようになった.一般市民がわかりやすいようにイラストや表を多用して25項目にわたるQ&A方式で,疑問に答えながら自らの病態をよく理解して納得のうえで医療者とともに病気に立ち向かえる内容となっている.その他,国内外のガイドラインを表1に示すが,わが国では新たな慢性膵炎臨床診断基準20094)の改訂(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班,日本膵臓学会,日本消化器病学会合同)を受けて,膵仮性囊胞の内視鏡治療ガイドライン2009(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班および日本膵臓学会),慢性膵炎の合併症に対する内視鏡治療ガイドライン(膵石症の内視鏡治療ガイドライン2010)および慢性膵炎の断酒・生活指導指針2010(ともに,厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班委員会)が日本膵臓学会雑誌『膵臓』に公表されている.
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