今月の主題 早期胃癌の鑑別診断
展望
慢性膵炎
山形 敞一
1
,
建部 高明
1
1東北大学医学部山形内科
pp.649-655
発行日 1967年5月25日
Published Date 1967/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403200094
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Ⅰ.はじめに
現在,各種臓器疾患において,慢性炎症という概念はいろいろな面で再検討すべき諸問題を含んでいるように思われる.慢性膵炎においても,いかなる病理組織学的な変化を本症とするかという定義の問題,またはこれに関連する病因や病型分類,さらには形態学的変化と臨床像との結びつきなどについては,なお不明な点が多い.とくに,わが国においては,これまで形態学的な裏づけの少ない臨床像や膵以外の臓器疾患に対する除外診断などによって選択した症例に基づいて,本症の概念を形づくっていた傾向は否定できない.このような現状において,まず本症を病理組織学的に観察し,次いでその形態学的な所見と臨床像との関連性を追及することによって,わが国における慢性膵炎を再検討することは,有意義であると考えられる.
慢性膵炎を考える場合,われわれの診断基準をのべると,次のようである.すなわち,
(1)組織学的に明らかな膵線維化(pancreatic fibrosis)を認めたもの.
(2)X線検査で膵の石灰化像および腫瘤形成を認めたもの.
(3)主として膵液検査法(secretin test)で明らかな膵外分泌機能障害を認めたもの.
(4)このような膵の形態学的変化および機能異常が他の上腹部疾患に随伴するものでなく,膵に原発したものと考えられるものである.
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