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本書は「精神科臨床エキスパートシリーズ」の一冊である.このシリーズは,「精神科臨床の現場で最も知識・情報が必要とされているテーマについて,その道のエキスパートに診療の真髄を惜しみなく披露していただき,……明日からすぐに臨床の役に立つ書籍シリーズを目指して」企画されたものであり,本書は認知症のエキスパートである朝田隆教授により編集されたもので,彼は「認知症の患者さんとそのご家族にどのように対応すればよいのかを示し,『今ここで』役立つ智恵の源になることを目指した」と記している.
本書は全6章から構成されており,第1章「認知症の予防策はあるか?――危険・防御因子と予防介入の実例紹介」(山田達夫)では,認知症の危険因子や防御因子を概説した後,山田らの予防研究である安心院プロジェクトを紹介し,その成果が示されている.第2章「薬物療法の実際」(水上勝義)では,認知機能障害の治療薬としてのコリンエステラーゼ阻害薬であるドネぺジル塩酸塩,ガランタミン,リバスチグミンやNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンを解説し,さらにBPSDへの治療薬としてのコリンエステラーゼ阻害薬,NMDA受容体拮抗薬,漢方薬,抗精神病薬,抗うつ薬などが自らの経験に基づいて紹介されている.第3章「もの忘れ外来における認知症患者とのコミュニケーション」(藤本直規,ほか)では,外来診療や患者・家族交流会やデイサービスでのコミュニケーションの仕方について藤本らが実践している内容を紹介しつつコミュニケーションの重要性が強調されている.第4章「非アルツハイマー型の認知症とは?」(横田修,ほか)では,レビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症に焦点を当て,最近の知見も含めて詳しく紹介されている.第5章「介護者のこころをケアする」(松本一生)では,介護者の心の変化を詳しく解説し,介護者をいかに支えるかが豊富な経験に基づいて解説されている.第6章「生活上の障害への対処法――家族へのアドバイスを中心に」(朝田隆)では,認知症の生活機能障害に焦点を当て,それへの具体的な対応について専門医の立場から具体的なアドバイスが紹介されている.
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