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がんセンターでは日々“Trial and error”が繰り返されています.先日も外来の導線を大幅に変えて,どうすれば患者がスムーズに受診できるかの試みがありました.また,亡くなられた患者さんの子供たちが企画したfund raising “Breath of Life”も,この夏初めて開催されました.もちろん入念に準備をしますが,とりあえず試してみる精神が根底にはあります.子供たちは,自分も社会に影響を与えることができると大きな自信になったそうです.Trial and errorと言うからには,もちろん失敗もあります.がんセンターから特定の宗教色をなくす試みとして,例年行っていた仮装サンタクロースの廃止を発表した時は,全米中のマスコミにつまらない試みだとしてコテンパンにやられ,その日のうちに廃止を撤回しました.今回から数回に分けてアメリカで感じた緩和医療教育の“Trial and error”について紹介したいと思います.
さて,緩和医療教育をどう進めるか.何を伝えるにも,誰に伝えたいかで伝えるべきことが違います.対象は一般の方,病気に向き合う患者,学生,看護師,経験のある医師などさまざまです.どれだけ多くの情報を伝えるかも重要です.多すぎては焦点がぼけて身につきません.しかし,当たり前のことだけでは退屈してしまいます.どの程度,突き詰めるかも学習者の真剣さによって変えなくてはいけません.何を教えるか迷ったときには,教えられる側にたってみると,教えるべきことが見えてきます.以前に紹介しましたが,僕が医学生に講義をする時に,“Non curable”あるいは,“No more chemotherapy”(使える抗がん剤がない,抗がん剤を使わないほうがいい)ということと“Nothing to do”(何もすることがない)はまったく違う.この一点さえ感じてくれればいいと強調しています.頭でわかっているのと,感じているかは違うのです.
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