連載 Festina lente
遊びごころ
佐藤 裕史
1
1慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター
pp.1447
発行日 2012年8月10日
Published Date 2012/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106113
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ガイドライン,マニュアル,コンプライアンス,アドヒアランス,アルゴリズム――いつ果てるともしれぬ片仮名の文書が次から次へと出てきては遵守を要求され,箸の上げ下ろしまで事細かに詮索されるような雰囲気が,病院といわず社会全体に横溢するように感じる.対費用効果やら効率化やら行程表の短縮化やらも求められるから,踊り場も手すりもない細い急な階段を,一列に並び背後から怒鳴られながら慌てて駆けのぼる気分である.あるいは,お釈迦様が雲の切れ目から地獄に向けて一筋垂らした蜘蛛の糸を,我先にと争って大勢でのぼろうとしているようなものか.もしそうだとすると,蜘蛛の糸がどうなったかを思えばぞっとしない.
病棟運営にしても,空床は作るな,一日に二回転しろ,長期入院は断れ,退院したら暫くは再入院はだめだ等々,病棟医が求められる事務的義務はこの十年で倍以上になっているのではないかというのが私の印象である(ここに書き出した一端は何れも医学的内容とはいえない).こうして書くだけでも,四苦八苦していた病棟医長時代を思い出して眩暈がしてくる.
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