- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医師の負担軽減が話題となっている.その原因として医師不足に議論が集中しているが,医師の負担増の背景には医学の急速な進歩,医療の専門分化という問題も存在している.高度に細分化された医療現場では,忙しい臨床に追われる医師にとって,自分の専門分野はともかく,他領域の進歩を学ぶことは容易ではない.しかし目前の患者は自分の専門外の問題を抱えていることも多く,説明を求められる機会は多かろう.専門書を紐解けばいいわけであろうが,その時間はないのが常である.また自らの医療についての患者への情報提供,インフォームド・コンセントにも,看護師などチーム医療のメンバーとの情報共有にも,時間が必要である.幾ら時間があっても足りない.そのような内科診療の現場に備えておくとよい1冊がこの特集である.
本増刊号は「患者に何をどう説明するか」のガイドブックである.「どのような病気でしょうか」「どのような検査をするのでしょうか」「どのような治療がありますか」「日常生活ではどのような注意が必要ですか」「急変した場合どうしたらよいでしょうか」という患者からの5つの質問に答える形でまとめられている.患者への説明サンプルとその背景にある病態や治療指針,ガイドラインに関するコンパクトな解説がある.要領を得ていて過不足がない.さらに,「COPDは“治り”ますか?」,「どうしても透析だけはしたくないのですが…」,「インスリン注射は嫌です」,など130を超える患者の訴えなどにも専門家の経験に基づく一口メモが添えられている.内科疾患が網羅されているが,日常診療で出合うことの多い精神疾患,運動器疾患,皮膚疾患などの関連分野も取り上げられている.患者とのコミュニケーション術に関する話も冒頭にあり,参考になる.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.