連載 医事法の扉 内科編・12
医療訴訟のしくみ(2)
福永 篤志
1
,
松川 英彦
2
,
稲葉 一人
3
1国家公務員共済組合連合会 立川病院脳神経外科
2国家公務員共済組合連合会 立川病院内科
3中京大学法科大学院
pp.2208-2209
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105715
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前回は,証拠保全まで説明しました.患者らは,証拠保全により収集した医療記録のコピーをチェックし,医療過誤の有無を検討します.もしそれが認められなければ,訴えを提起しても意味がありませんから,通常は訴えません.ただ,たとえ医療記録上明らかな過誤が認められなくても,医師・患者間の信頼関係が破綻していると,「隠蔽しているかもしれない」などと猜疑的にみられやすくなり,訴訟へと発展する可能性が高くなってしまうでしょう.また,過誤の可能性について患者らは,知り合いの医師などに相談することも多いようです.なぜなら,証拠保全には,弁護士の助けが必要ですが,さすがに弁護士といえども医学知識まで十分把握している人は少ないからです.余談ですが,第三者の医師が医事紛争に独自の見解を述べたために訴訟化することがあります.「後医は名医」と評されるように,患者らから相談された医師は,前医への不用意な批判は大いに慎むべきでしょう1).
ところで,証拠保全で収集した医療記録だけでは裁判を維持するのに不十分だと考えられる場合もあります.そのような場合には,訴訟提起前に証拠を収集する手続きとして,以下の2つの方法を利用できます.
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