今月の主題 “がん診療”を内科医が担う時代
Column
抗がん剤のドラッグ・ラグ
片木 美穂
1
1卵巣がん体験者の会スマイリー
pp.2115
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105705
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海外で治療薬が承認されてから,日本で承認されるまでの時間の差を“ドラッグ・ラグ”と呼びます.ドラッグ・ラグという言葉がマスコミに大きく取り上げられたのは2007年10月.日本テレビの報道番組が「ノーモアドラッグ・ラグ」と題して特集を組み,「さまざまな疾患の治療薬が日本では使えない」と報じたのです.海外で承認されている治療薬が使えないという問題は2000年頃から「未承認薬問題」としてメディアには頻繁に登場していましたが,ドラッグ・ラグという新しい言葉になったことで,「承認されない薬」という観点ではなく,「当たり前の治療が当たり前に受けられない」という問題に切り替わったように感じています.
実際,当時卵巣がん患者が困っていた治療薬は「未承認」ではありませんでした.リポソーマルドキソルビシン(ドキシル®)はカポジ肉腫ですでに承認されていましたし,ゲムシタビン(ジェムザール®)は非小細胞肺がんや膵臓がんなどで承認されていました.つまり,日本で承認されていない「未承認薬」ではなく,ある疾患には承認されているけれど同じように効果が期待される別の疾患には承認されていない「適応外薬」のラグなのです.患者からは「外来化学療法室の隣のベッドで治療している肺がん患者さんはジェムザール®で治療ができるのに,私は卵巣がんだから治療できない」という悲しい訴えが届き,胸が締め付けられる思いがしました.
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