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多発性骨髄腫のフォローアップの基となる2010年時点での骨髄腫の考え方
多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)の治療は,最近10年の間に飛躍的な進歩を遂げた.以前はMP(メルファラン+プレドニゾロン)療法などのアルキル化薬+ステロイド療法が主な治療法とされた.この治療法では,一時期病勢が制御される時期があってもやがて不応性となり,平均して数年で亡くなられる予後不良の疾患とされてきた.
しかし最近では若年者MMに対する自家造血幹細胞移植の定着,高齢者MMに対するMP+新規薬剤の併用療法などで,原病の長期にわたる制御が得られるに至った.自家造血幹細胞移植施行例では,全国平均では平均生存期間が55カ月とされており,MP療法を明らかに凌駕している.当科でも200例を超える造血幹細胞移植を実施しているが,支持療法を工夫した造血幹細胞移植では5年生存率約80%,8年生存率約60%の成績を得るに至っている.また,以前催奇性が問題となり禁止薬とされていたサリドマイドは血管新生抑制作用が催奇性に影響する反面,栄養血管が発達した腫瘍に奏効することが確認された.特に骨髄腫では腫瘍細胞由来物質により骨髄腫増殖巣近傍に栄養血管が発達していることを反映してか,サリドマイドが骨髄腫に奏効することが確認された.サリドマイドに続いてその誘導体のレナリドマイドなども開発され,診療に用いられるに至った.この両者の薬剤は血管新生抑制作用に加え,直接的な抗骨髄腫作用,骨髄腫の増殖を抑制するeffector cell増強作用など多様な作用があることが解明された1).特に抗腫瘍免疫に関与する細胞を調節する薬物という意味から,IMIDs(immunomodulatory drugs)と総称されている.
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