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あとがき
Y
pp.2052
発行日 2010年11月10日
Published Date 2010/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104916
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●「母親が糖尿病だと,子どもが糖尿病になるリスクが高い」という文章を目にしたのはいつの頃でしたか,当時は「そうか,食習慣が糖尿病に影響するから,調理する人に左右されるのだ」と勘違いしておりました.時が流れて,母性遺伝するミトコンドリア遺伝子の多型が1つの因子らしいということを知り,経験知はいつしか科学的知識に裏付けられるのだという静かな感動を味わいました.●次々と公開される大規模臨床研究の成果をどう読み解くか,新しく開発され続ける治療薬をどう日常診療へ取り入れるか.医師には,常に科学的な態度が求められます.その一方で,患者が科学だけでは割り切れない存在であることに耐える力が,日常診療を支えているのだと感じます.●私事ですが,もう何十年も糖尿病を患っている祖母が,ほかの疾患を理由に急性期病院へ入院しました.回復期病棟へ転院したものの自宅へ戻る目処がつかず,介護系施設へ入所することになりました.そこでは,施設の売り上げを伸ばすために,包括されている医療費を抑えるインセンティブが働き,縮小医療となる実態を目の当たりにし,愕然としました.●科学的根拠に基づいた医療が,介護保険制度のために,提供されなくなるなんて.高齢になるほど,医療と介護を明確に線引きするのは難しいはずです.せっかくの医療の成果を台無しにするような制度設計の見直しを切実に感じた経験でした.●糖尿病の発症予防や進展予防のための生活習慣こそが,健康な生活である――特集座談会のメッセージを胸に,夏太りを解消し,食欲の秋を乗り切りたいと思います.
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