特集 一般医のためのエコー活用法
Ⅲ.心臓
疾患の評価
成人の先天性心疾患
岩永 史郎
1
1慶應義塾大学医学部循環器内科
pp.214-217
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402103072
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心房中隔欠損症(atrial septal defect:ASD)
先天的に心房中隔の一部が欠損する疾患であり,両心房間にシャント血流を生じる.欠損孔の位置で一次口型,二次口型,静脈洞型に分類される(図1).最も多い二次口型は発生段階での一次心房中隔の過剰吸収か,二次心房中隔の形成不全によって生じる.一次口型は心内膜床の形成不全で生じ,心室中隔欠損とクレフトによる僧帽弁・三尖弁閉鎖不全を合併することがある.静脈洞型は上大静脈または下大静脈が右房に接続する静脈洞部分の欠損で,稀である.右房後方を通過する右肺静脈との隔壁も欠損し,部分肺静脈還流異常を合併する.
重症度は肺血流量(Qp)と体血流量(Qs=心拍出量)の比Qp/Qsで表される.これは欠損孔の大きさに加えて,左右心室の拡張性と大動脈・肺動脈の血管抵抗のバランスによって決定される.肺血管抵抗の高い胎児期には右室へ血液が流入しにくいため,シャント血流は右房から左房に向かう.出生後には呼吸開始とともに肺血管抵抗が低下して,右室へ血液が流入しやすくなる.このため,シャント血流は左房から右房へ向かうようになる(図2).QpはQsより大きくなり,右室,肺動脈,肺静脈,左房に容量負荷を生じる.加齢は左室拡張性を低下させるため,徐々に右室容量負荷が増大する.Qp/Qs≧2の症例では中年以降に易疲労感や浮腫などの右心不全症状や心房細動・粗動による動悸を自覚することが多い.特に,左室拡張性を低下させる高血圧,左室肥大や心筋梗塞を合併した症例では右心不全を生じやすい.
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