書評
内科レジデントの鉄則
市村 公一
1
1昭和大・精神医学
pp.953
発行日 2007年5月10日
Published Date 2007/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102763
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
卒後研修必修化を翌年に控えた2003年,全国の臨床研修病院を回って研修の実態を調査したが,最初に訪問した聖路加国際病院の印象は非常に鮮烈だった.昼食時のセミナーだけでなく,朝夕の回診でも上級医から研修医に次々と質問が飛び,研修医がポンポン答える.研修医も疑問に思ったことは遠慮なくどんどん質問する.大学病院あたりなら「こんなこと聞いたら叱られるんじゃないだろうか」と躊躇する研修医が普通ではないかと思うが,ここでは知らないことを知らないままにやり過ごすのが最大の罪といわんばかりの雰囲気なのだ.上級医も「後で自分で本を読んでおけ」とは言わない.その場で教える.
全国の25の病院を回って,誰が入っても本人の努力の如何にかかわらず一定のレベルの実力をつけさせる研修が,特定の医師の努力によるのでなく,病院のシステムとしてできあがっているのは,ごくわずかな病院しかないと感じたのだが,その最大の秘訣がこうした「耳学問」の徹底にある.それを裏付けるかのように,意外にも聖路加国際病院では研修医控室にごくわずかな本しかなかった.「『ワシントンマニュアル』は指導医の頭の中に全部入っている.研修医は自分で読まなくても指導医に聞けばいい」とは沖縄県立中部病院の元院長で群星沖縄プロジェクトリーダーの宮城征四郎先生の名言だが,繰り返し耳学問で教わり,かつ多くの症例を通じて教わったことを実地に経験を重ねることが,落ちこぼれを作らない研修医の最も肝心な点だと痛感した.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.