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教訓となった症例(2)
山口 哲生
1
1JR東京総合病院呼吸器内科
pp.103
発行日 2003年11月30日
Published Date 2003/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102449
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〔症例4〕 12月.肺癌末期の70歳代女性.痛みや呼吸困難などの症状をとるのにデキサメサゾンの大量投与がいいと宣伝されて,抗潰瘍薬なしで連日1週間以上打ち続けた.先輩の医師としこたま飲んでいた夜半に患者が大吐下血をしたと電話連絡を受け,急ぎ駆けつけたが,目にしたのはすでに失血死して真っ白になった遺体であった.「ステロイド潰瘍なんて初めてみたよ」と先輩に言われた.余談になるが,この状況を遺族に説明しようとするのだが,こちらはまともに話しができないほど酔っぱらっていたし,遺族側の長男も話しを聞いていられないほど酔っぱらっていて,まともな会話にはなっていなかったらしい.ただ「最後まで診ていただいて」と感謝された.よき時代であった.
〔症例5〕1979年1月2日.当直明けに帰ろうとしたところ,外傷で入院している外科病棟の50歳代の男性が,急に腹痛を訴えだしたので診てくれという.患者は元気でとくに腹部に所見はなく,この頃にはかなり所見も読めるようになっていた腹部X線像も異常なしと判断した.痛み止めを打って経過観察としたのであるが,その夜に患者は下血して亡くなられたと聞いた.腸間膜動脈塞栓症であったらしい.
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