特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
細菌検査
検体別同定検査各論
喀痰微生物検査
國島 広之
1
1東北大学大学院内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野
pp.550-551
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101897
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臨床的意義
1. 塗抹鏡検
感染症治療における抗菌薬の選択において,最も重要なことは,起炎菌の特定である.グラム染色をはじめとする塗抹鏡検は,30分以内に検査を行うことができ,培養同定検査を行う前にある程度の菌種の推定も可能である.塗抹鏡検は,ほとんどの細菌および真菌を染色するグラム染色や,結核菌をはじめとする抗酸菌を染色する抗酸性染色がある.その他,レジオネラ菌においてはヒメネス染色,ノカルジア菌やクリプトスポリジウムにおいてはKinyoun染色などが行われる.また,レジオネラ菌やクラミジア菌,マイコプラズマに対しては蛍光抗体法を用いた特殊染色が用いられることもある.
近年,MRSA,ペニシリン耐性肺炎球菌,多剤耐性緑膿菌,キノロン耐性大腸菌など,抗菌薬に耐性を示す多くの微生物があり,その治療に難渋することも多いため,抗菌薬の適正使用が強く叫ばれている.塗抹鏡検は抗菌薬適正使用における最も基本的な感染症検査であり,嫌気性菌や栄養要求性の高いなど培養されにくい微生物であっても鏡検が可能であることや,推定された菌種によって専用培地の選択も行うことができる.したがって,微生物検査においては,原則的にすべての検体の塗抹鏡検を実施する必要があり,その有用性は極めて高い.また,血液培養や各種抗原検査と併用することにより,さらなる診断の向上を期待することもできる.
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