特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
腫瘍マーカー
消化器系
CA19-9(糖鎖抗原19-9)
石原 武
1
,
山口 武人
1
,
税所 宏光
1
1千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科学
pp.501-503
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101881
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
1979年,Koprowskiらは,ヒト大腸癌細胞株SW1116をマウスに免疫して作製したモノクローナル抗体NS19-9が,消化管の癌細胞膜と反応し,正常の消化管粘膜細胞とは反応しないことを報告した1).同抗体と反応する抗原物質として糖鎖抗原が同定されCA19-9(carbohydrate antigen19-9)と命名された.その後,膵癌,胆管癌患者の血清中にCA19-9が高濃度に存在することが判明し,大腸癌よりも陽性率が高いことから,現在では胆・膵領域の腫瘍マーカーとして用いられている.近年,CA19-9の機能面での解析が進み,癌進展にかかわる因子として注目されている2).
NS19-9が認識するCA19-9の抗原決定基は,細胞膜表面に位置するLews式血液型抗原のうちルイスA糖鎖(Lea)にシアル酸が付加したシアリルルイスA(sialyl Lea)である.正常組織でも膵管,胆管,胆囊,気管支,唾液腺,胃,大腸,前立腺の上皮細胞には微量ながら分布しており,健常者の血清中にも分子量約20万の糖蛋白として存在する.一方,癌細胞中では同抗原の産生が亢進しており,癌患者血清中では分子量300万以上のsialo-mucinとしても存在することが報告されている.ルイスA糖鎖を合成するfucosyltransferaseは日本人では約10%前後の人で欠損しているとされ,この欠損者ではルイスA糖鎖もシアリルルイスAも合成されない(Lea陰性).Lea陰性者では癌を併発しても,シアリルルイスAは産生されないことより血中CA19-9は測定感度以下となる.
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