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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)は好中球の細胞質に対する自己抗体であり,蛍光抗体法による染色パターンからP-ANCA(核の周辺のみが染色される)とC-ANCA(細胞質全体が染色される)に分類される.前者の主な対応抗原はミエロペルオキシダーゼ(MPO)であるが,それ以外にlactoferrin,elastase,cathepsin G,lysozyme,azurocidin,bactericidal permeability-increasing protein(BPI)を抗原とするP-ANCAも報告されている.C-ANCAの主な対応抗原は好中球α顆粒中のセリンプロテアーゼであるproteinase-3(PR-3)であることが知られている.染色パターンが異なるのは,これらの抗原の細胞質内での分布の違いによるものではなく,基質である好中球をアルコール固定したためのアーチファクトである.ANCAに限らず,自己抗体の出現機序はいまだに明らかになっておらず,自己抗体自体がpathogenesisに関与しているのか,あるいは単なる随伴現象であるのかさえ明らかになっていないが,ANCAはそれ自体が組織傷害にかかわっていると考えられている.
上記疾患のうち顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:mPA),アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angiitis:AGA),Wegener肉芽腫症はKussmaul-Maier型の古典的結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PN)から派生してきた疾患である.古典的PNは膠原病の1つでありながら,いまだに自己抗体が発見されていない.しかるに,独立してきたmPA,AGA,Wegener肉芽腫症にANCAという自己抗体が存在することが1980年代前半に明らかとなり,これら疾患の診断に大きく寄与することとなった.また,特発性半月体形成性糸球体腎炎という一次性腎炎でもP-ANCAが高率に陽性となる.
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