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典型的な症例
症例1:特発性間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP).69歳男性.1年前より労作時息切れ,乾性咳が出現し,徐々に増強してきた.胸部単純X線像では全肺野にわたって粗い網目状陰影が広がっているが,分布は下肺末梢優位である.肺門陰影と縦隔陰影の輪郭はきわめて不鮮明で,肋骨横隔膜角の輪郭も不鮮明である.下肺野では直径3~5mmで,壁の厚さ1~2mmの輪状影が入り混じって蜂の巣のような陰影を呈している.いわゆる蜂窩状陰影である.下肺の容積は減少し,上肺野ではブラもみられる.胸部CTでは蜂窩肺が明瞭で牽引性気管支拡張像もみられる. 症例2:BOOP(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia).66歳女性.2カ月前より微熱が出現し,胸部単純X線上異常影が認められた.各種抗生物質使用にても改善せず,陰影に移動性が認められた.胸部単純X線像では両側肺野末梢性に均等な浸潤影が認められる.陰影内に空洞や気管支透亮像は認められない.胸水やリンパ節腫大もみられない.胸部CTでは胸膜下に非区域性の浸潤影とすりガラス様陰影が認められる.両側性,肺末梢性,移動性の肺胞性陰影で,臨床所見とあわせると好酸球性肺炎とBOOPが最も考えられる.両者は画像上鑑別困難である.Churg-Strauss syndromeも画像所見は一致しているが,末梢血好酸球増多と喘息症状はみられなかった.X線像からは肺胞上皮癌やリンパ腫も考えられるが,臨床経過(移動性陰影)からは否定的である.肺炎や肺結核,肺梗塞,肺胞出血,Wegener肉芽腫症なども鑑別に挙げられるが,臨床所見と陰影の移動性から考えにくい.肺吸虫症でも末梢性の移動性浸潤影がみられることがある.
びまん性肺疾患の画像診断にHRCTは非常に有用であるが,その画像診断の第一歩は胸部単純X線写真である.びまん性肺疾患の胸部単純X線写真の読影には,いわゆる肺胞性パターンと間質性パターンの2つの基本的パターンに分けて読影することが有用である.これらのパターンに病変分布のパターンと急性か慢性かの経過を加えることによって鑑別診断を絞ることができる.
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