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胸部単純X線撮影の意義
胸部単純撮影ほど疾患のスクリーニング検査に優れている画像診断法はない.簡便かつ安価で,読影の処理能力にもずば抜けている.そのためわが国においては,医療施設で頻用されるのみならず,学生の定期健康診断にも胸部撮影が行われるほど普及している.胸部CTの出現により,その診断精度に関しての限界も囁かれてはいるものの,その簡便性において,当分の間は臨床の現場で見捨てられることはないであろう.また医療被曝の面からみても,他の放射線検査とは比較にならないほど微量であり,胸部単純写真の被曝線量は自然放射能による年間被曝量の数分の一とされている.この点からも,放射線画像検査の唯一の欠点である放射線被曝量は,胸部写真から得られる情報と比較すれば全く問題にならないといえる.空気という気体で満たされ十分に膨らんだ肺臓内に起きる多くの病変は,炎症であれ腫瘍であれ,正常肺との強いコントラスト差により,前処置なしに,容易に異常陰影として描出されてくる.そのため,空気(陰性造影剤)で満たされた肺臓は,カルシウムなど(陽性造影剤)で構成される骨組織とともに,単純撮影には理想的な臓器といえる.
わが国で広く行われている胸部検診を考えればわかるように,胸部単純撮影は老若年者を問わず健康管理にはきわめて有用な検査法である.特に結核の蔓延していた時期に,わが国独自で開発した間接撮影装置による胸部検診が発達している.このロールフィルムを使用した撮影装置は移動可能の組立式装置や大型自動車にも設置可能なため,被検者を移動することなしに効率良く多数の撮影を短時間のうちに処理できる.そして胸部の間接写真は,直接撮影と比べてその診断能において決して劣るものではなく,特に処理能力において,ロール状に巻かれていたフィルムを観察装置で巻取りながらの読影は,短時間で読影処理が可能な点からも検診には大変に有用な診断モダリティである.
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