今月の主題 腹部疾患をエコーで診る
臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー
〈腹部大動脈・その他〉
静脈血栓・塞栓
平井 都始子
1
,
大石 元
2
1奈良県立医科大学附属病院超音波診断室
2奈良県立奈良病院
pp.280
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100988
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静脈血栓症は,凝固亢進,血流停滞,静脈壁障害などによって発症する.下肢深部静脈血栓症は手術後の発生率が25%との報告もみられ,骨盤内静脈まで及ぶ頻度が高く,下肢に限局するもの,大腿部まで血栓の及ぶものの順に頻度が低下する.下大静脈に及ぶことは稀である.肺梗塞例では,大腿静脈や下腿ヒラメ静脈の血栓症が原因となることが多く,血栓が血流によってゆらゆら動くfloating signを認めた場合は肺塞栓の発生率が高い.上肢深部静脈血栓症では,カテーテルなどが原因となる場合が多い.
超音波検査では,血栓の範囲,性状,表在静脈の血流状態,肺塞栓の危険性などを評価する.静脈血栓症では,急性期には血栓の存在する部位は,存在しない部位の静脈に比較して拡張して描出される.静脈内に血栓が充実エコーとして捉えられる場合もあるが,全く無エコーであることもある.しかし,圧迫しても静脈がわずかにしか扁平化しないことや,末梢をミルキングしてもカラードプラ法でカラー表示の得られないことから,静脈血栓症と診断できる(図1).下肢全体の深部静脈に血栓を認める場合,皮下浮腫や表在静脈の拡張がみられる.血栓が消退してくると,血栓周囲に血流の再開がみられる.慢性期の血栓はBモードで輝度が高く,石灰化を伴う場合もある.
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