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大動脈が限局性に拡張した状態を動脈瘤といい,約3/4が腹部大動脈に発症する.このうち90%は腎動脈起始部より下から始まり,腸骨動脈に達する場合もある.原因の多くは高血圧,動脈硬化であり,瘤の血管壁構造から真性と仮性動脈瘤に,形状により紡錘状あるいは囊状に分類される.一般的な治療の適応は,最大瘤径が5cm以上とされている.大動脈内膜の亀裂から壁内に血液が流入し,中膜と外膜が剥離し2腔になった状態を大動脈解離といい,多くは緊急対応が必要であり,迅速かつ正確な診断が望まれる.本来の血管腔を「真腔」,解離により発症した腔を「偽腔」と称し,両者は再入口部(リエントリー)を介してさまざまな部位で交通する.偽腔の拡大や解離の進行により大動脈分枝の狭窄が生じ,支配臓器の血流障害など重篤な合併症をきたす場合もある.
腹部大動脈瘤の超音波診断に際しては,瘤径,動脈瘤の範囲,壁在血栓の有無,動脈瘤周辺の血腫の有無,炎症の合併などの観察が重要である(図1).瘤の周辺に血腫形成が認められれば切迫破裂を示唆しており緊急対応を要する.大動脈解離の診断に際しては,解離の部位と範囲,エントリー・リエントリーの部位,解離腔内の血流状況,偽腔内血栓の有無,分枝動脈の血流状況に留意しながら観察する(図2).これらの観察にはカラードプラ法の併用が必須となる.真腔と偽腔の鑑別には,解離腔の形態,腔内の血栓の有無,収縮期での拡張状況が目安となる.すなわち,血管壁と解離内膜とのなす角度が鋭角である場合,腔内に血栓を認める場合は偽腔,収縮期に拡張傾向のみられる場合は真腔の可能性が高い.近年,ステントグラフト留置による治療が増加し,リークの有無の評価や瘤径の経過観察にも超音波検査が有用である.
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