今月の主題 腹部疾患をエコーで診る
臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー
〈脾〉
転移性脾腫瘍
水口 安則
1
1国立がんセンター中央病院臨床検査部
pp.267
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100976
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1. 疾患概念
日常診療において発見される転移性脾腫瘍(metastatic splenic tumor)の頻度は稀であり,われわれの経験では約0.03%である.原発巣はさまざまであり,卵巣癌,肺癌,悪性黒色腫,大腸癌,胃癌,子宮体癌などが認められた1).本疾患は,原発巣の臨床情報があり,他臓器に多発転移が存在する場合は診断に苦慮することは少ないと考える.しかし,原発巣未発見の場合,あるいは限局性に脾のみに転移が認められるときは,今後の診療方針に重大な影響を与えることが予想されるため,他臓器における診断と同様,的確に質的診断を行う必要がある.脾転移性腫瘍が発見され,その後の全身検索にても他病変が発見されないため切除され,予後に良好な影響を与えた症例を少なからず経験している.鑑別すべき疾患として,悪性リンパ腫,過誤腫,血管腫,リンパ管腫,血管肉腫などがある
. 2. 超音波像
他臓器への転移性腫瘍と同様,さまざまな所見を呈する.多くは不整形,境界明瞭,輪郭不整を示す.転移性肝腫瘍にて特徴的に認められる辺縁低エコー帯の存在は,脾では約6割に認められる(図1).辺縁低エコー帯を認めない腫瘍も存在するので注意を要する.内部エコーは低エコー,等エコー,高エコーとさまざまである.卵巣癌原発では腫瘍内部の大部分の領域が囊胞成分で構成されていることがほとんどであり,特異的な超音波像を示す(図2).検査時に同時的肝転移巣が認められる症例が約半数あり,この場合,肝病変と脾病変の超音波所見が全く同一または類似している場合が多いため,鑑別診断の参考となる.
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