危険がいっぱい―ケーススタディ・医療事故と研修医教育 第12回【最終回】
起き上がれない34歳男性
田中 まゆみ
1
1聖路加国際病院内科
pp.2222-2225
発行日 2005年12月10日
Published Date 2005/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100408
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今回の症例は,尻餅をつき,腰痛で動けなくなったため,救急車でERを受診した34歳の男性である.
アリス 本日の症例は,「起き上がれない」と救急車でERに運び込まれた34歳のアフリカ系男性です.
エディ HIVと魚鱗癬の既往がある一人暮らしの34歳男性が,来院した日の朝,ちょっと物を持ち上げようとした拍子に尻餅をついて,それ以来腰の痛みで起き上がれなくなったそうです.しびれや筋力低下はありません.そのままでは身動きもできず,救急車を呼んでER受診しました. 既往歴としては重症の魚鱗癬と重度肥満(BMI54),HIV陽性でAIDS発症はなくHAART(高活性抗レトロウイルス療法)を受けています.そのHIVクリニックのDr.ケントにしか話したくないそうで,救急では病歴もそれ以上は取れませんでした.朝11時頃に救急に到着していますが,患者が「Dr.ケントを呼んでくれ」というので連絡を取ったところDr.ケントはあいにく学会出張中で,そう説明しても「明日は帰ってくるんだろう,それまで入院させてくれ」の一点張りで,救急医は一応内科研修医に入院として申し送ったのですが,日勤の入院担当研修医は「ぎっくり腰では入院適応はない」と拒否,しかし患者は動けないので,救急部の指導医が「入院適応はある,家に帰しても患者は自分で自分の面倒がみられない状態なのだから」と研修医に入院を命じたところ,その研修医は救急に患者を見にも来ないで4時に準夜帯の入院担当研修医に引き継いで帰宅してしまいました.その間,患者は,内科入院ということで,昼食が供され,完食しています.
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