活動レポート 調査研究をベースにした保健所活動・その3
公衆衛生と福祉との接点:在宅ケアに関する調査研究から
三徳 和子
1
1川崎医療福祉大学医療福祉学部保健看護学科
pp.695-700
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902819
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はじめに
今回は,福祉分野との関連問題への取り組みを紹介しよう.きっかけは1980〜1983年,筆者の岐阜県庁勤務時代,老人保健法成立を前にして高齢者保健活動を考えたことである.当時,有吉佐和子氏の小説「恍惚の人」1)が話題となり,疾病対策は老人保健法により実施されるが,恍惚の人はどうなるのかと素朴な疑問を持った.
当時日本では急速に高齢化が進んでおり,老人の健康問題が取り上げられていた.なかでも障害を持つ老人,とりわけ痴呆性老人は「ぼけ老人」と呼ばれた,言葉の使い方が不適切な時代でもあった.今でも痴呆性老人に関しては偏見が問題になるが,当時ははるかに深刻であり,痴呆性老人の実態さえも把握されていなかった.昭和55年に東京都が行った実態調査2〜5)があったが,ケアの困難さに関する論文はほとんどなかった.そこで,当時筆者はぼけ老人の在宅介護を支える要因に関する事例の比較研究を手始めに,高齢者・障害者のための住宅改善調査,市町村における福祉保健婦の役割と課題についての調査を行ったので,本稿にて取り上げてみたい.
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