特集 老人の保健・福祉
老人の保健と福祉の接点を求めて
那須 宗一
1,2
1中央大学社会学
2東京都老人総合研究所
pp.552-553
発行日 1978年9月15日
Published Date 1978/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205671
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I.保健医療制度はどう変わるのか
いま老人の保健医療制度は,軽症受診率の増加と国保の財政的負担の増大から,大きく揺れ動いている.去る7月10日,厚生省は現行の医療制度を「老人保健」として別建てにする構想を発表した.その骨子は,65歳以上の老人に「老人健康手帳」を交付し,予防→治療→リハビリテーションの保健システムを包括した健康保険制度にしようというものである.病気になった時の「保険」だった時代から,健康な老人づくりの「保健」時代に発展させようというのである.この制度改正の目的主旨がタテマエだけでなく,ホンネであるならば,反対する論拠はない.
だが,この「老人保健」の別建て制度には,現在でも8つに分かれた保険制度の煩雑さと制度間の格差をます拡大再生産し,結果としては行政公務員の人員増に終わりはしないか,という強い疑念をもたざるをえない.今回の構想のホンネとみられる国保財源の見直しでは,実施主体を市町村におき,公費+事業主・住民拠出金の方式でまかなう,というのである.さらに,老人医療無料化による乱診と薬づけを防止するため,老人に対する一部負担方式を導入するというのである.
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