特集 根拠に基づく公衆衛生の展開
根拠に基づく公衆衛生の意義と方向性に関する論点—アメリカにおける最近の動きをめぐって
林 謙治
1
1国立公衆衛生院保健統計人口学部
pp.14-19
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902429
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近年わが国では質の高い医療を目指して「根拠に基づく医療」(EBM)の普及が強く求められいる.質の高い医療の提供は医療技術のみによって自己完結するわけではなく,当然のことながらそれを支える医療体制,健康政策および社会政策全般の整備にかかわる問題である.最近集団を対象とした予防医学の分野でも同様な発想からevidence-based public health(EBPH)が追求されている.さらに,政策の形成においてevidencebased health policy(EBHP)の必要性が主張されている.EBM技術の開発を促したのは工業技術革新の医療への波及および過去30年間欧米の社会変革を受けた結果であることは,その発展史をひもとけば明らかであろう.医療の中にあっては評価の手法がEBMとして開花したが,社会変革の中にあっては技術評価の社会的適用がperformance management & reviewとして出現し,両者は同じ方向性を持つことに気づかされる.
EBM技術の進化はオペレーションズ・リサーチ(OR)を原初技術として,効率と効果を追求する戦略ソフトウェアに基盤をおいている.EBMにとって技術上の直接的な相似形であるテクノロジー・アセスメントは費用便益・費用効果分析あるいは社会的インパクトの評価に用いられる手法である.
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